令和6年 司法試験 民訴法 再現答案

司法試験再現答案
OSHIN
OSHIN

答案構成20分 7枚程度 予想評価E 作成日時2024.7.24 20:30です。

【反省点】
・設問1はおそらく0点に近い。明文なき任意的訴訟担当の規範のうち、弁護士代理の原則に反しないことっていう一番大事な規範を抜かした。他の論証と混同していたため、この点はかなりの減点を覚悟している。
・自白の拘束力については、信頼関係破壊の不存在の抗弁とかいう架空のワードを用いて、その間接事実として主張してます的な浅い議論をしてしまって理解していないことが露呈しまくりで爆死。
・既判力は根拠2つだけで書いたが、何せ論証が浅いし、より大切な紛争の一回的解決の観点からの検討がめっちゃ薄い。


設問1

第1 課題1

1.任意的訴訟担当の意義

 任意的訴訟担当は、権利能力なき社団などの構成員が代表者の一人に訴訟追行する場合など、全員で訴訟追行することによる権利関係が複雑化を避け、代表者一人に訴訟追行を委任することによって、構成員の訴訟経済等に資するという意義がある。

2,明文なき任意的訴訟担当の要件

 選定当事者訴訟(民事訴訟法(以下略)30条1項)は、任意的訴訟担当を認める1例に過ぎない。そこで、明文なき任意的訴訟担当であっても、㋐構成員から授権があり㋑授権を受けた代表者が当該訴訟を訴訟追行することにつき、適切な知識・能力を有し㋒訴訟追行について合理的必要性がある場合には、これを許容すべきである。

3.本件における明文なき任意的訴訟担当の可否(課題2)

⑴本件と最判45年判決の異同判例では、組合代表者による総有にかかる組合財産の処分権限が問題となっていたため、組合代表者にそもそも持分権を観念することができない(民法676条参照)事案であった。一方本件では、判例のように代表者に訴訟追行権を委ねるという点では共通するものの、組合ではないため本件建物がⅩらの共有(249条以下)に属し、「他の共有者の同意」があれば、「共有物」たる本件建物に関してⅩ1単独の訴訟追行権を授与することで「変更」(同法251条)を加えることができる事案である。さらに本件では、Ⅹらが同じくAの子であり、A死亡後の遺産分割協議において、Xら全員が賃貸人となること、本件契約の更新、 賃料の徴収及び受領、本件建物の明渡しに関する訴訟上あるいは訴訟外の業務についてはX1が自己の名で行うことが取り決められていた。
⑵そうすると、本件ではまず、X2・X3が自ら当事者となることは時間的・経済的負担が大きいことを理由に、X1単独で訴訟を提起してほしいと述べていることから、授権があったと解し得る(㋐)。
そして、Ⅹらが兄弟同士で本件建物の賃料収入について利害が一致していることと、上記取決めを加味すれば、Ⅹ1が当該訴訟を訴訟追行することにつき、適切な知識・能力を有しているといえる(㋑)。また、上記の通りⅩ2・3がⅩ1の訴訟追行を積極的に支持している状況下で、Ⅹ1自身も共同訴訟追行が難しいようなら自分一人で訴訟を提起することもやむを得ないとの意向が認められるから、合理的必要性もあるといえる(㋒)。
⑶以上より、明文なき任意的訴訟担当が認められる。

設問2

1.裁判上の自白の意義及び要件

⑴裁判上の自白とは、ⅰ口頭弁論又は口頭弁論準備手続においてする、ⅱ相手方の主張と一致するⅲ自己に不利益な事実の陳述を意味する。「事実」には、少なくとも主要事実が含まれ、ⅲは、相手方が証明責任を負う事実をいう。
⑵その意義は、裁判上の自白により証明不要効(179条)が生じる結果として、審判排除効(弁論主義第2テーゼ)も生じることで、訴訟に対する当事者の信頼確保及び自己責任を問うことができ、訴訟経済と紛争の実効的解決を図ることにある。

2.立場の選択

⑴本件では、第1回口頭弁論準備手続期日において本件陳述をしており、当該手続の目的は、Yから賃料支払いを示す書証が提出されなかったことを踏まえて、賃料不払いによる無催告解除の可否に関して当事者間の信頼関係の破壊を基礎づける事実関係の存否について整理することである。そうすると、裁判官及び当事者間では、賃料不払いとは別の解除原因を構成するものとして本件陳述がされているのではなく、争点とっている信頼関係破壊の不存在を基礎づける間接事実として本件陳述をしていると考えるのが通常であるといえる。また、本件陳述それ自体についてみても、「何回か料理教室を無償で開いたが、Ⅹ1は夫婦でそれに毎回参加していたが、賃料の話が一切でなかった」旨の発言については、Ⅹ1がその賃料不払いについて許容していたことを基礎づけるもので、上記文脈からすると、Ⅹ1毎回参加するほどに信頼関係が継続していたことを推認する事情として主張しているとみるべきである。
⑵そうすると、本件陳述は、信頼関係破壊の不存在の抗弁という主要事実を基礎づける間接事実の陳述に過ぎない。間接事実は、証拠と同様の機能を有し、これに自白の拘束力を認めると、自由心証主義を不当に害することになるから、裁判上の自白は生じないと解する。よって、裁判上の自白は成立しないとの立場で立論するべきである。

3.裁判上の自白が成立しないとの主張

⑴本件陳述は、上記の通り第1回口頭弁論準備手続期日においてする(ⅰ)、相手方であるⅩらの主張と一致する主張ではあるものの(ⅱ)、Y自身に不利益な主要「事実」の陳述(ⅲ不充足)ではないから、裁判上の自白が成立しない。

設問3

1.既判力により基準時前の事由が遮断される根拠

⑴既判力の目的は紛争の実効的解決にあり、その根拠は、㋐十分な手続保障による自己責任と㋑紛争の蒸し返し防止による紛争一回的解決にある。
⑵前訴口頭弁論終結時という基準時前の事由は、前訴において攻撃防御方法を提出するなどして十分な手続保障が与えられていたのに、これをしなかったという自己責任が問える(㋐)。また、基準時前の事由を後訴で蒸し返して自由に争えるとすると、いつまでも紛争の実体的な解決が図られず、他方当事者の既得の地位や訴訟経済を害するから一回的解決の要請が働く(㋑)。
よって、基準時前の事由には、既判力の根拠が妥当し、遮断される。

2.解除権行使が遮断されるか

⑴ 確かに、相殺権のように、それを行使することが実質的な敗訴をいみし、前訴で主張しないことが合理的であるともいえないから、前訴で解除権を行使しなかったことは自己責任を問いうる(㋐)。また、解除権の行使は、相殺権や建物買取請求権のように訴訟物とは全く別個の新たな債権ではなく、訴訟物それ自体に付着して前訴で争うことが可能なものだから、これを後訴で主張できるとすると、紛争の一回的解決が図れない(㋑)。
⑵ もっとも、具体的事情によっては、㋐㋑が妥当しない場合があると解する。
ア 本件では、Aが令和3年7月に死亡してからそれを相続したⅩらによってYとの賃貸借契約が継続しており、YはⅩらが相続する前の令和3年1月から本件セミナーを行っている。Ⅹらとしては、令和2年4月1日から、AY間で問題なく建物所有目的で賃貸がされていたことから、従前と同様の態様でYがこれを利用していると信じることも不合理ではない。そして、実際に建物居住目的で利用されているかは、外観から客観的に判明し得ないうえに、セミナーは料理教室などの水道光熱費を上昇させるような利用態様を伴わず、その回数も月1,2回の頻度であったことからなおさら調査が困難である。そうすると、前訴基準時前にこれを覚知して争うことが困難であったといえ、十分な手続保障による自己責任が問いうる状況にない(㋐不充足)。
イ また、本件セミナーを自ら開催したYに対しては、これを既判力により遮断されるとして別訴で主張して争わせる方が、ⅩY双方にとって紛争の一回的解決に資さない(㋑不充足)。
⑶以上より、既判力の根拠が妥当しないから、解除権の行使は遮断されない。

以上

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