令和6年 司法試験 行政法 再現答案

司法試験再現答案
OSHIN
OSHIN

答案構成20分 6枚程度 予想評価Ⅽ~B 作成日時2024.7.16 19:00です。

【反省点】

・設問1⑴に時間割きすぎて(40分)、  ⑵に入る時点で残り一時間。

・設問2は時間足りず、殆ど反論に触れずに最後は適当に理屈ならべて殴り書きした。

・時間配分を考えて、設問1で厚くなりすぎない。

・規則の使い方が全くわからず、時間もないので触れなかった。

・本件認可と略すと、ただの認可と変更認可が混同して逆にわかりづらくなった。

・違法性の承継の手続的観点がうろ覚えでガチで論理がおかしい。


設問1-⑴

1.「処分」(行訴法(以下略)3条2項)とは、・・・をいう。これは講学上、①公権力性、②具体的・直接的法効果性によって判断されるが、③原告の実効的権利救済の見地を補充的に考慮するものと解する。

2.

⑴まず、本件事業計画変更認可(以下、「本件認可」)はQ県知事により法11条に基づいて、その優越的地位を前提として一方的になされるものである(①)。

⑵次に、法効果性についてみるに、市街地再開発事業制度では、第1種市街地再開発事業(以下、「本件事業」)においては、原則として施行地区内の宅地所有者はその宅地化学割合に応じて再開発ビルの敷地の共有持分権が与えられ、そこに地上権が設定されて区分所有権たる権利床を得ることになる。これは、事業施行前における宅地所有権が、所有者の意思によらず強制的に共有持分権の設定および権利床付与という権利変換がされ、さらには実際の工事着手に至るという性質を有するものである。具体的には、認可(法11条)がされ、さらにその変更認可(38条)及びその公告(法19条1項)がされれば、施行地区内で建築行為等の制限(法66条1項)を受けて宅地所有者の具体的な私権制限(憲法29条1項)が生じるだけでなく、宅地所有者は権利変換の処分(法86条1項)を受けるべき法的地位に立たされることになる。そうすると、先行行為たる本件認可によって、明らかな処分である後行の権利変換処分に至るという意味において、両行為の強い連動性ゆえに、特段の事情がない限り、権利変換を受けるべき地位に立たされるものとして、権利変換処分の法的効果を本件認可に前倒し的に読み込むことができると解すべきである。よって、具体的・直接的法効果性があるといえる(②)。

⑶さらに、後行処分たる権利変換処分の段階に至れば、殆どの場合には施行地区内の宅地に共有持分権付与及び権利床付与が終了し、上述の通り権利変換に至る手続が完了しているといえるから、権利変換処分に対する取消訴訟を提起してこれを争っても、本件事情全体のシステムを著しく阻害するとして事情判決(31条)を受ける可能性が高く、原告の実効的権利救済に資さない(③)。

3.以上より、本件認可には処分性が認められる。

設問1―⑵

1.法16条所定の意見書提出手続がなされていない点について

⑴本件認可が「政令で定める軽微な変更」(法38条2項)にあたれば、16条所定の手続を経なかったとしても違法とはならない。都市再開発法施行令(以下、施行令)4条では、「軽微な変更」にあたる事情を5つ挙げているところ、本件計画変更は、「設計の概要の変更」(1号)「事業施行期間の変更」(3号)、「資金計画の変更」(4号)にはあたらないから、2号か5号に該当するものと解していると思われる。本件では、変更対象区域たるⅭ地区が本件事業の対象区域たるB地区の「延べ面積の10分の1」にあたり、それを「こえる…増減を伴わないもの」(2号)にあたる。そうすると、施行令の定める「軽微な変更」にあたるから、法16条所定の手続を省略しても違法とはならない。

2.ⅰ都計法13条1項13号及びⅱ法3条の要件充足性について

⑴ⅰについて

都計法13条1項13号は、開発事業について「一体的に…定める」ことを要求し、同項柱書では、「一体的かつ総合的に定めなければならない」ことを規定する。本件では平成28年認可から数年後になってⅭ地区を施行区域に編入するものとしているが、「一体性」を満たさず違法とはならないか。一体性は、「総合的に定め」ることともされているから、必ずしも施行区域を同時に設定する必要はないとも解される。しかし、R市がその区域全域を都計法上の都市計画区域に指定されていることを考慮しても、本件のように、編入対象のⅭ地区がB地区からみて河川を超えた対岸にあって、数年後に編入されたことを加味すれば、かかる「一体性」を欠くというべきである。よって、同号の要件を満たさず、この点は違法となる。

⑵ⅱについて

ア 法3条4号は、「当該都市の機能の更新に貢献」という抽象的文言を規定しているから、要件裁量が認められれば、裁量権の行使が逸脱・濫用(30条1項)とならない限り違法とならない。逸脱・濫用となるのは、判断過程に他事考慮・考慮不尽などの合理性の欠如があり、その結果、当該判断が社会通念上著しく妥当を欠く場合を言うと解する。

イ 行政裁量の存否は、文言の内容と処分の性質から判断する。同号が上記のような抽象的文言を用いているのは、何が「当該区域内の土地の高度利用」となるかは都市ごとに異なるから、地域の実状に即した専門的・政策的判断を知事の裁量判断に委ねることで柔軟に解決する趣旨である。そうすると、Q県知事に要件裁量が認められると解される。

ウ 本件では、B地区組合の組合員であり、かつⅭ地区内の宅地所有者のEが、R市長や理事らに対して従前からⅭ地区を本件事業の施行地区に編入するよう働きかけていたこと、Ⅽ地区は周辺の人通りも少なく、B地区からの人の流入も期待できなかったこと、A駅方面に行くには橋がないために遠回りをする必要があったことを考慮すると、Q県知事としてはEの要望を加味して、「土地の高度利用」のためにⅭ地区を事業計画に参入することが「都市の機能の更新に貢献」するとして、これを考慮すべき情況にあったから、他事考慮や考慮不尽はなかったといえる。そうすると、社会通念上当該判断が著しく妥当を欠くとは言えず、適法である。

⑶以上より、Ⅾはⅰの点のみ違法として主張できると解する。

設問2

1.確かに、取消訴訟の排他的管轄及び出訴期間制限(14条1項)による法律関係の安定の要請から、先行処分から後行処分への違法性の承継は原則として認められない。

2.しかし、判例のいう実体法的観点及び手続法的観点の両要件を満たした場合には、法律関係の早期安定の要請に比して、原告の手続保障の要請が上回るから、例外的に許容すべきである。

⑴実体法的観点

ア 実体法的観点は、㋐後行処分が先行処分の処分要件の一部を構成していること㋑両処分が同一目的を有すること㋒判断機関の同一性によって判断される。

イ 後続処分たる本件権利変換処分(以下、本件処分)は、「権利変更計画…の認可を受けたとき」として先行処分たる本件認可が処分要件の一部を構成している(㋐)。また、両処分は、施行区域内の宅地所有者に共有持分権付与及び権利床付与を通して、工事着手のために最終的には当該区域内の権利変換をすることを目的としている(㋑)。さらに、本件認可及び本件処分の両者ともQ県知事という同一の行政庁によってなされる(㋒)。

ウ そうすると、実体法的観点の要件は全て充足する。

⑵手続法的観点

ア 手続法的観点は、㋐先行処分の段階で後行処分がなされることを知り得ないこと㋑後行処分の段階で初めて自己の権利に法的影響が生じるとして、取消訴訟を提起しないという判断が同人の置かれた状況を客観的にみてあながち不合理ではないことによって判断される。

イ 確かに、本件認可がされれば、権利変換計画が法19条及び83条によって利害関係人に通知ないし公告されることとなるから、先行処分の段階でⅮはこれを十分に知り得たという反論も考えられる。もっとも、判例では、建築関係規定における安全認定処分の段階でそれを一般公衆に広く告知したとしても、法的知識に乏しい通常人は今後何らかの手続きがされることを必ずしも知り得ないとしている。本件も同様に考えられば、Ⅾは本件認可がされたとしても、権利変換までされると覚知しえないのが通常である(㋐)。また、本件認可の段階では、単に施行地区内の宅地所有者の共有持分権付与及び権利床付与がされるのみで、「公告…関係権利者に…通知」がされる後続の権利変換に至って初めて、工事により自らの私権に制限が生じると解することは、客観的にみてあながち不合理であるとは言えない(㋑)。

3.以上より、両観点から要件を充足するから、違法性の承継が認められ、Ⅾの主張が認められる。

以上

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