早稲田大法科大学院2023 再現答案 民法

ロースクール入試再現答案

※当記事は、あくまで再現ですので、誤り箇所が多数見受けられると思います。参考程度にご覧いただければ幸いです。訂正箇所については、是非コメントしていただければと思います!

問題1

【問一】二重譲渡による履行不能に基づく損害賠償請求及び履行不能の基準時

1.BのAに対する請求の根拠は、履行不能(412条の2)に基づく損害賠償請求(415条1項、2項1号)であり、その要件は、①履行不能、②損害及びその数額、③①と②の因果関係、④Aの帰責事由である。以下順に検討する。

⑴AがⅭへ甲土地を売却し、かつ登記を移転した時点(6月20日)で、Bは第三者たるⅭに登記なくして対抗できなくなるため(177条)、AのBに対する登記移転義務は履行不能に陥る(①)。また、Aは自身の利益のために自らの責任で(④)甲土地をⅭに売却し、登記を了した結果、Bは甲土地を得ることができず、履行不能時の甲土地時価に当たる損害(1700万円)を被った(②③)のであるから、上記要件全てを充足する。

⑵また、賠償額については、金銭賠償の原則(417条)から、原則として損害賠償額の客観的算定が可能となる履行不能時を賠償額の算定基準時とすべきである(416条1項)。
もっとも、当該目的物の価額上昇事情があり、損害賠償債務を負う債務者が、履行不能時において当該目的物の価格騰貴を予見すべきであった場合には、例外的に騰貴した現在の価額が算定基準時となる。
本問においては、甲土地の価額が本件契約前から上昇傾向にあり、AのBに対する債務が履行不能となった6月20日時点で、Aは価格騰貴を予見すべきであったといえるから、賠償額は騰貴した現在の価格1700万円を請求することができる。

2.以上より、BはAに対して履行不能に基づく損害賠償請求として、1700万円の請求をすることができる。

【問2】二重譲渡事案における相対的構成の可否(譲渡人善意、転得者悪意)

1.BのⅮに対する請求の根拠は、所有権に基づく甲土地明渡請求であり、要件は①Bの所有権、②Ⅾの占有である。本問では、ⅭからⅮへ甲土地の移転登記及び引渡しが終了しているから、②は充足する。では①はどうか。

⑴AB間で甲土地の売買契約(555条)なされた時点で、所有権はBへ移転する(176条)が、仮にⅮが177条の「第三者」に当たる場合には、BはⅮに登記なくして対抗することができない。よって、以下Ⅾの「第三者」該当性につき検討する。
ア 177条の趣旨は、物権変動を公示することにより、同一の不動産につき所有権を有するに至った自由競争の枠内にある正当な権利・利益を有する第三者に不測の損害を与えないようにすることにある。従って、「第三者」とは、当事者及び包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張するにつき、正当な利益を有するものをいう。この点、登記の欠缺を主張することが信義則に反するという①背信性、他の権利者を害することを知っているという②悪意性を有する背信的悪意者は、自由競争の枠内にあるといえないため、「第三者」にあたらない。
イ 本問Ⅾは、本件契約の存在及びBが甲土地を購入できないと苦境に陥ることを知っており(②)、Bに高値で売ることを目的としてⅭから甲土地を購入した経緯がある(①)から、背信的悪意者として「第三者」に当たらない。
ウ よって、Bは登記なくしてⅮに甲土地の所有権を対抗することができる。

⑵ もっとも、Ⅾは反論として、Ⅽが善意であるから、仮に悪意であってもこれを承継するため、「第三者」となる旨主張することが考えられる。
この点、信義則違反は個別に判断すべきであるし、仮にⅮが反論するような絶対的構成が許されるとすると、正当な利益を有する第三者を保護しようとした177条の趣旨に真っ向から反することになる。更に、何より背信的悪意者が対抗できるとすることは一般的な法感情に反する。
よって、Ⅾはやはり「第三者」にあたらず、Bは登記なくしてⅮに対抗することができる。

2.以上より、BはⅮに対して登記なくして所有権を対抗することができ(1-①)、上記請求を成し得る。


問題2

【設問1】消費貸借契約と保証債務。特に保証人の抗弁。

1.AのBに対する請求

⑴AB間では、金銭の返還の合意及び金銭の交付がなされているから、金銭消費貸借契約(587条)が成立してる。もっとも、Bが返済を怠っているから、AはBに対し、債務不履行責任に基づく損害賠償請求をする(415条1項)。かかる請求の根拠は、①Bの債務不履行②損害及びその数額③①②の因果関係④Bの帰責事由である。
Bは返済期限(412条1項)が到来したにもかかわらず、自己の懈怠によって(④)融資額の返済をしないため(①)、Aに700万円の損害が生じている(②、③)。
以上より、上記請求をすることができる。

※遅延損害金の話が抜けた。

2.AのⅭに対する請求

⑴AC間では、Ⅽが保証債務の履行意思表示する旨の書面により、主債務の保証契約が有効に締結され(446条1項、2項)、主債務が債務不履行となっている(同条1項)から、AはⅭに対し、AB 間保証契約に基づく履行請求をすることができる。一方Ⅽはいかなる反論をするか。
ア まず、ⅭはAに対し、「まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる」(催告の抗弁:452条)。また、催告の抗弁をした後であっても、「保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行しなければならない」(検索の抗弁:453条)旨反論することができる。
イ 更に、これは問題文に記載がないが、「主たる債務者が主張できる抗弁を持って債権者に対抗することができる」(457条2項)。また、「主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において」「債務の履行を拒むことができる」(同条3項)

【設問2】保証債務の承継と761条類推適用?

1.CD間に婚姻関係がないため、ⅮがⅭの権利義務を承継する(896条)ことはないから、AはⅮに対して何ら請求することができないのが原則である。
もっとも、CD間は同居し、事実上夫婦と同様の関係にあったことから、本件保証契約が「日常の家事」に関する債務(761条)に関する規定を類推適用できないか。

⑴この点、761条の趣旨は、夫婦に日常家事債務に関する便宜を図り、日常債務に過ぎない法律行為につき、夫婦間で当然連帯債務になると考える相手方を保護することにある。
本問では、Aは当初、AB間の消費貸借契約について難色を示しており、Ⅽが保証契約を締結することが何より重要であったことからすれば、Ⅽが死亡したとしても、同居して夫婦同様の関係にあるⅮが承継すると考えるのが自然であることから、第三者たるAの信頼を保護すべきであり、761条類推の基礎がある。
⑵では次に、本件契約が761条の「日常の家事」にあたるか。
「日常の家事」とは、夫婦が共同生活を送る上で、通常必要とされる事項をいい、その該当性判断に当たっては、夫婦の社会的地位や収入等の個別的事情のみならず、法律行為の客観的性質に照らして判断すべきである。
本問では、Ⅽは700万円という高額な保証契約を締結しており、これは上記「日常の家事」に当たるとは到底いえない。

2.以上より、原則通り、AはⅮに何ら請求することができない。

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